非がん疾患の緩和ケアについて 

query_builder 2021/05/17
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非がん疾患の緩和ケア


がん以外の疾患の方に対して緩和ケアを行う場合、特に「非がん疾患の緩和ケア」と呼ぶことがあります。私はこの表現自体が、癌患者さん以外に対して緩和ケアがまだ十分浸透していない表れだろうと考えています。


WHO(世界保健機関)は緩和ケアを必要とする主な疾患として

心血管疾患(心不全を含む)、がん、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、糖尿病、腎不全、肝不全、多発性硬化症、パーキンソン病、関節リウマチ、神経疾患、認知症、先天性疾患、後天性免疫不全症候群(AIDS)、薬剤耐性結核を挙げています。


まず癌、非癌にかかわらず言えることですが、緩和ケアはどのくらい病状が進行しているか、余命がどのくらい残されているかに関わらず苦痛があれば提供されるべきものです。


なので、「モルヒネが始まったからもう終わりが近いのだ」ではなく、抗がん剤治療など積極的に治療を行っている段階でもモルヒネなどによる苦痛の緩和は行われます。


とは言え、例えば心不全を例に挙げれば、心不全に対する治療をしっかり行うことで症状はよくなります。(癌でも抗がん剤治療で癌が縮小すれば症状が改善することもあります)

心不全で体に余分な水分が貯まって足のむくみや肺に水が溜まっている場合には体の余分な水分を排出する利尿薬を使用することで、むくみや呼吸困難の症状を改善できます。


ただし心不全がある程度進行してしまうと、適切な治療を行っても、症状が良くならない状態(治療抵抗性の状態)になってしまうことがあります。


その段階まで来ると、症状を緩和するために心不全に対する治療のみでは無く、緩和ケア(症状を和らげるための治療)が必要になってきます。


ただし、治療抵抗性であっても効果が期待できる場合にはあくまでも心不全の治療を行います。

治療で十分に緩和されない症状に対して緩和ケアを行います

心不全、慢性呼吸器疾患などで大きな苦痛となるのは呼吸困難感です。


呼吸苦の緩和


呼吸苦・呼吸困難感に対しての対処法は二つです。

①体に十分に酸素を供給して酸素不足の状態を改善する。

②息苦しい感覚を鈍らせることで「息苦しさ」を改善する。

具体的には酸素投与もしくはモルヒネ全身投与が選択肢になります。


酸素投与に関してはイメージがつきやすいと思います。体の状態が悪く十分に酸素を体内に取り込めないために脳が呼吸苦を感知している。なので酸素濃度の高い空気を吸ってもらい体に酸素が十分に取り込まれれば、呼吸苦は緩和できるというわけです。


ただし、呼吸筋の筋力が低下し呼吸に多大な努力を必要とする疾患(ALSなど)や、他疾患の場合でも、「体の中の酸素量は十分なのに呼吸苦が続く」という場合があります。この場合は酸素投与量を増やしてもあまり呼吸苦に対しての効果が期待できません。


モルヒネの効果・副作用


呼吸困難の感覚を鈍らせる薬剤として医学的に十分効果が立証されているのはモルヒネです。

同じ医療用麻薬でオキシコンチン、フェンタニルなどの薬剤もありますがモルヒネのほうが呼吸苦に対しては十分な効果があるといわれています。

呼吸苦に対してのモルヒネの投与は10-30㎎/日と、癌とくらべて少な目の量になっています。

量を増やすと副作用のリスクが高まるとされているためです。


息苦しさが強い場合、「浅くて速い呼吸」になることが多いです。これは「非効率換気」と呼ばれ、呼吸を頑張っている割には肺の奥まで空気がしっかり入っていきません。一方、息を速い速度で吸ったり吐いたりするために多大なエネルギーと酸素を消費し、余計に酸素不足になってしまいます。呼吸苦をモルヒネで取り除くことで非効率換気を是正する効果も期待できます。

またモルヒネには強力な鎮咳作用もあります。間質性肺疾患などで呼吸苦と頑固な咳を伴い、コデインなどで十分に症状緩和できない場合にも良い適応と考えます。


モルヒネを使用した場合、適正に使用する限りは「麻薬」の作用を心配する必要はありません。

現実問題としては、吐き気、便秘などの出現が問題になることがあります。

吐き気については2週間ほどで体が慣れるので最初の2週間程度だけ吐き気止めを併用することが多いです。

便秘に関しては、体が慣れることは無いので便を柔らかく薬を続けてもらったほうが良いでしょう。

モルヒネは腎臓が悪い方には使いづらい面があります。そのような場合にはモルヒネの改良版であるナルサスやほかの医療用麻薬を使用することになります。


その他の呼吸困難感に対する緩和ケア(非薬物療法)


送風療法や冷気療法、メントール嗅覚刺激、音楽療法など。

科学的裏付けもります。

リンクに詳しいです。


非がん疾患の緩和ケアの充実を


WHOによれば世界で年間2900万人が緩和ケアを要する疾患で亡くなり、そのうち2000万人が最終段階で緩和ケアを必要としていたとされています。

心不全やCOPDガイドラインにも終末期の呼吸苦緩和のためのオピオイド投与の記載があります。非がん疾患の終末期にも苦痛の無い最期をすごせるよう努力していく必要があります。

私も板橋・練馬の非がん疾患で緩和ケアを必要としている方に緩和ケアを実践していきます。





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