とくまる在宅クリニック

在宅医療とは何なのか

query_builder 2021/10/10
コラム

在宅医療とは何なのか?


在宅医療は、「医師をはじめ、歯科医師、訪問看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士、ケアマネジャー、ホームヘルパーなど多くの方々が連携して定期的に患者さんのご自宅などを訪問し、チームとなって患者さんの治療やケアを24時間対応で行っていく医療活動」です


定義としてはそうなのですが、その意義についてまとめてみます。


医療難民への医療提供としての在宅医療


高齢化の進行に伴い、疾患を持っていても診療所・病院に通院できない方が増えています。

足腰が悪くなったり、心臓を悪くして長い距離歩くのが困難だったり、あるいは認知症で一人での外出が困難だったり、理由は様々です。

高血圧、糖尿病などを外来に通えないから放置していると、脳血管障害(脳卒中)、心筋梗塞など重篤な疾患を発症するリスクが高くなります。

また慢性的に経過して入院とはならなくても苦痛の大きい疾患があります。

例えば外来に通えなくなったから、関節リウマチに対する治療が中断された方。

夜も眠れないほどの関節の激痛に苦しんでいる方も、適切に状態を評価し内服を少し調整するだけで症状を落ち着かせることができる場合がほとんどです。(間質性肺炎の有無など画像評価の出来ない在宅でも開始、再開しやすい薬剤かは十分考慮する必要があります)


医療を必要としていて医療にアクセスできない方に医療を提供する意義があります。


終末期の方の希望を叶える在宅医療


2017年厚労省「人生の最終段階における医療に関する意識調査」では69.2%の方が自宅で最期を迎えることを希望されています。

ただしこれまでは入院中に病院で亡くなる方がほとんどでした。

その中には、本来入院する必要のない老衰状態の方や、自宅で症状を緩和できる体制が無かったため症状の辛さから入院せざるを得なかった方もいたのではないでしょうか。


また自宅で亡くなることを希望されている場合にも「かかりつけ医」がいないと異状死扱いとなり警察による検視の対象となってしまいます(Pリンク


自宅で最期を迎えることを希望される方の希望を叶える意義があります。


入院のデメリットを避ける在宅医療


特に高齢者では入院によりADL(体の動きや日常生活でできること)が低下します。

また、医療関係者の間では常識ですが認知症の方が入院すると、認知機能の悪化を起したり、せん妄状態になってしまうことが多いです。

(認知症の方ご本人からすれば「住み慣れた場所からよくわからない場所に連れてこられ、周りは知らない人ばかり。体にたくさん管をつけられている」状況です)


一方、入院中元気がなくても自宅に戻ると元気になる高齢者も訪問診療をしているとよくみかけます


在宅医療では毎日の抗生剤の点滴、酸素投与など一般外来より一歩踏み込んだ治療をして入院を回避できる場合もあります。患者さん、ご家族が入院を希望されない場合はもちろん入院せずに在宅で治療を継続します。


国の医療費削減としての在宅医療


ここまで患者さんのメリットについて書いてきましたが、医療費の問題についても言及しようと思います。

結論から言うと、医療費抑制の観点からも在宅医療の普及が望ましいです。

実際に国もこの観点から在宅医療を推進しています。


①外来通院困難者の重症化を未然に防ぐ

高血圧、糖尿病など生活習慣病を治療するのはそれが脳卒中や心筋梗塞など重篤な疾患を引き起こすためです。重篤な疾患は高度医療を要するため、これらを未然に防ぐことは患者さんにとっても、医療費抑制の面でも良いことです。


②入院患者数(特に慢性期)の減少効果

以前は病状が安定している慢性経過の人も自宅で診れなければ入院させていました。

(いわゆる老人病院です)

入院では、医師看護師のマンパワーの必要量や検査回数の増加から医療費は増加する傾向にあり

家族にケアの中心になってもらい、医師が往診する方が医療費はかかりません。


国庫負担金は

訪問診療に在宅介護サービスを加えた額は入院の場合の2分の1から3分の1になるという試算もあります。


ただし以前は入院で診ていた人を家族がケアすることになる(家族のマンパワーを資源として使用する)ため家族・介護者の負担には絶えず配慮が必要となります。

積極的に活用できる制度などについて情報提供を行い、また家族に負担がかかりすぎるような医療は行わないという視点も必要になります。

(1日の内服の回数は可能な限り少なくし、必要以上に家族での処置を求めないなどです)


家族の負担を和らげるうえでは訪問看護や介護ヘルパーの助けも必要になります。


結論:在宅医療とは


在宅医療は患者さん、その家族が中心となり医師を含めた多職種が共同して療養・生活をサポートするものです

ただし、その意味合いは患者さん・家族によって異なってきます。

どんな理由で在宅を希望している人にも丁寧に対応していきたいと思います。



参考になるホームページ

ニッセイ基礎研究所 在宅医療が進められているのはなぜ?(リンク)