
モルヒネ使用と余命:科学的知見に基づく解説
本クリニックのウェブサイトへのアクセス解析を行った結果、「モルヒネ 余命 どのくらい」という検索キーワードが多く見受けられました。
これを受けて、今回のブログ記事では、モルヒネの使用と余命との関連について、科学的な知見を基に解説いたします。
「モルヒネ 余命 どのくらい」というフレーズには、以下の2つの解釈が考えられます。
モルヒネを使用する必要があるほど、癌が進行している。
モルヒネの使用が、寿命を縮める可能性がある。
これらのポイントについて、一つ一つ詳しく見ていきましょう。
1. モルヒネの使用と癌の進行
Van den Beuken-van医師は、癌患者の痛みについて詳細な研究を行っています。
2016年に発表されたその研究論文(1によれば、癌のステージによって痛みの程度が異なるわけではないと報告されています。
癌が初期であっても、痛みの神経に触れる位置に存在すれば痛みは生じ、進行しても痛みが全く問題にならない患者もいます。
モルヒネを使用するほどの痛みがあるからといって、必ずしも病状が進行しているわけではありません。
WHOは、早期からの緩和ケアの重要性を強調しており、痛みが強い場合は初期であってもモルヒネを含む医療用麻薬の使用が推奨されています。
2. モルヒネの使用と余命
オピオイド(モルヒネを含む)の使用量と患者の予後との間に有意な相関は見られない、という研究結果が複数報告(2(3されています。
副作用に注意しながら適切な投与量を守れば、モルヒネが「命を縮める」わけではありません。
まとめ
モルヒネの使用は、適切に管理されれば、癌の進行や余命に直接的な悪影響を与えるものではありません。
痛みのコントロールと患者のQOL(生活の質)向上のために、適切な緩和ケアが必要です。
参考文献
1) J Pain Symptom Manage 2016;51:1070-1090
2) Cancer. 1999 Sep1;86(5):871-7
3) J Palliat Med 2010 Sep;13(9):1079-83