
皮下点滴についての解説
皮下点滴とは、一般的に血管ルートの確保が困難な終末期の患者や、在宅療養中の患者に対して行われる治療方法の一つです。
この記事では、皮下点滴の定義、可能な薬剤、そして実際の運用について詳しく解説します。
1. 皮下点滴とは?
皮下点滴は、血管に直接点滴の管を入れるのではなく、皮下組織に留置針を設置して点滴を行う方法です。
このため、事故的に抜針しても出血のリスクがなく、血管確保のために何度も針を刺す必要がありません。
特に、在宅の現場では血管の確保が難しい場合や終末期の緩和ケアを目的として行われることが多いです。
ただし、デメリットとして、皮下組織から全身に薬剤がゆっくりと吸収されるため、効果の発現が緩やかとなる点が挙げられます。
2. 皮下点滴に適した薬剤・輸液
皮下点滴に使用する薬剤や輸液は、以下の3つの条件において皮膚に刺激・炎症を起こさないものである必要があります。
①浸透圧
②pH
③添加物
例として、抗生物質のセフトリアキソンの皮下点滴は広く行われており、特に口からの抗生物質の内服が(発熱の影響などで)困難で、血管ルートの確保も難しい患者に適しています。
また、βラクタム系のその他の抗菌薬も使用されることがあり、薬物動態的には時間依存性抗菌薬が相性が良いとされています。
3. 在宅での皮下点滴の実践
経口からの水分摂取が不十分な場合に、週1~3回程度補助的に補液を行うことが考えられます。
家族でも抜針対応が可能なため、訪問看護師の訪問は1日1回で輸液を行うことができます。
※点滴開始と抜針をともに訪問看護で行う場合は1日2回の訪問が必要となり、介護保険を使用した訪問看護の場合は運用が困難になることもあります。
末期心不全患者に対してシリンジポンプを用いたフロセミドの持続皮下注を行うこともあります。
フロセミド持続皮下注に関しては在宅心不全患者の再入院抑制について海外で多くの報告があります。
まとめ
皮下点滴は、特定の患者層にとって非常に有効な治療方法となります。
適切な薬剤選択と運用により、患者のQOLの向上に貢献することが期待されます。