とくまる在宅クリニック

認知症と排尿障害

query_builder 2023/08/18
コラム


認知症は、記憶や認識能力の低下を引き起こす疾患として知られていますが、それだけでなく、身体的な症状や障害も伴うことがあります。

中でも、排尿障害は認知症患者やその家族にとっての大きな悩みの一つとなることが多いです。

この記事では、認知症と排尿障害の関係やその対応について詳しく解説します。

認知症と排尿障害の関係
認知症の進行に伴い、以下のような排尿に関する問題が生じることがあります。

トイレの場所の認識が難しくなる:認知症の患者は、自宅でさえトイレの場所を見失うことがあります。これが原因で、トイレに間に合わず失禁することがある。


尿意の認識が低下する:尿意を感じることが難しくなり、トイレに行くタイミングを逃してしまうことがあります。


夜間頻尿:夜中に何度もトイレに起きることが増える。これは、膀胱の機能の低下や体内時計の乱れなどが原因となることが考えられます。

排尿障害の原因
認知症の患者における排尿障害の原因は多岐にわたります。以下は、その主な原因となるものです。


薬物の影響:抗認知症薬(ドネペジルなどのAChE阻害薬)は排尿障害を引き起こしうることが知られています。(7%程度の頻度で蓄尿障害が出現します)

膀胱や尿道の問題:膀胱の筋肉の低下や骨盤底筋の低下など、身体的な問題が排尿障害の原因となることがあります。

神経系の問題:認知症は脳の神経細胞が損傷する疾患であり、これが排尿をコントロールする神経の機能に影響を及ぼすことがあります。


心因・心理的な要素:認知症の方に見られる極端な心因性頻尿・失禁への不安は”膀胱のBPSD”と呼ばれることもあります。

          この場合BPSDの治療薬の使用も検討されます。



対応方法
認知症の患者における排尿障害の対応は、以下のような方法が考えられます。

トイレの場所を明確にする:トイレのドアに大きな表示をする、トイレのライトをつけっぱなしにするなど、トイレの場所をわかりやすくする工夫が有効です。

定期的なトイレの誘導:一定の時間ごとにトイレに誘導することで、失禁を予防することができます。

薬物療法:高齢男性の排尿障害は前立腺肥大の関与の可能性をまず考えます。

     過活動膀胱に使用される抗コリン薬の一部は認知症に悪影響を及ぼすことがあり注意が必要です。


リハビリテーション:リハビリは切迫性尿失禁(トイレに間に合わない)、腹圧性尿失禁に対する効果が期待できます。

まとめ

認知症と排尿障害は、密接に関連しています。薬物療法や環境調整などを併用しながら症状のコントロールを行っていきます。